G7首脳会議で発表された共同声明が、中国国内や台湾問題を追う専門家の間で注目を集めている。声明では、中国を名指しこそしていないものの、「東シナ海、南シナ海、台湾海峡における力や威圧による一方的な現状変更に反対する」と明記された。
一見すると毎年繰り返される外交文書のように見える。しかし中国が神経を尖らせる理由は、声明そのものよりも、その背後で進行する国際環境の変化にある。
なぜG7は台湾問題への言及を強めているのか
多くの報道では「中国へのけん制」と説明される。
しかし本質はもう少し複雑だ。
G7各国が懸念しているのは台湾そのものではなく、台湾海峡が世界経済の生命線になっている点である。
現在、世界の先端半導体の大部分を台湾企業が供給している。さらに日本、韓国、中国、東南アジアを結ぶ海上物流の多くが台湾周辺海域を通過している。
もし台湾海峡で軍事衝突が起きれば、
- 半導体供給網の寸断
- 海上輸送の混乱
- エネルギー価格の上昇
- 世界経済の停滞
が同時に発生する可能性がある。
つまりG7は台湾を守ろうとしているというより、世界経済システムそのものを守ろうとしているのである。
中国が最も警戒しているのは軍事力ではない
中国メディアや中国外交部の反応を見ると、軍事的な脅威以上に警戒しているものがある。
それが「国際的な合意形成」だ。
中国は長年にわたり、各国との個別外交を重視してきた。
しかし近年は、
- G7
- NATO
- EU
- QUAD
- 日米韓協力
などが台湾問題や経済安全保障問題で連携を深めている。
今回の共同声明には韓国、インド、ブラジル、ケニア、エジプトなどの招待国も参加した。
中国から見れば、これは単なるG7声明ではなく、「中国に対する国際的な包囲網が徐々に形成されている兆候」に映る。
だからこそ中国は毎回強く反発するのである。
中国国内では何が起きているのか
中国国内では経済減速が続いている。
不動産不況、地方政府債務問題、若者失業率問題など課題は多い。
こうした状況では、中国指導部にとって国家統一や主権問題は非常に重要な政治テーマとなる。
台湾問題は単なる外交問題ではない。
中国共産党の正統性そのものと結び付いている。
そのため台湾問題で弱腰と見られることは避けなければならない。
結果として、
G7が台湾問題に言及する
↓
中国が反発する
↓
G7がさらに警戒を強める
という構図が繰り返されている。
日本はなぜ当事者なのか
日本では台湾有事を遠い海外の問題と考える人も少なくない。
しかし実際には日本こそ最も大きな影響を受ける国の一つである。
沖縄は台湾からわずか100km台の距離に位置する。
また日本の輸出入の大部分は台湾海峡周辺を経由している。
さらに日本企業の多くが台湾半導体産業に依存している。
つまり台湾海峡の緊張は、
- 日本企業の利益
- 日本の物価
- 日本の雇用
- 日本の安全保障
に直結している。
そのため日本政府は近年、「台湾海峡の平和と安定」を外交文書で繰り返し強調するようになった。
G7声明が示した本当の変化
今回の声明を「中国批判」で終わらせると本質を見失う。
重要なのは、台湾問題がもはや中国と台湾だけの問題ではなくなったことだ。
かつては中国の内政問題として扱われていたテーマが、現在では国際秩序や世界経済の安定に関わる問題として認識されている。
中国が恐れているのは軍艦一隻や声明一枚ではない。
台湾問題をめぐって、世界の主要国が共通認識を持ち始めていることそのものなのである。

