2026年6月、フランス・エビアンで開催されたG7首脳会議で、各国はレアアースや永久磁石について単一供給国への依存度を大幅に引き下げる方針を打ち出した。名指しは避けたものの、対象が中国であることは明らかだった。
しかし台湾メディアや海外メディアの分析は冷静だ。
「脱中国化は必要だが、短期間での実現は極めて難しい」
なぜ中国依存から抜け出せないのか。その理由は、多くの人が考える「資源量」ではなく、中国が築き上げた巨大な産業システムにある。
G7が目指すレアアース脱中国化
G7は2030年までに重要鉱物や永久磁石の単一供給国依存を60%未満へ引き下げ、さらに将来的には50%まで低減する目標を掲げた。
背景には、中国によるレアアース輸出管理の強化がある。
レアアースは、
- EVモーター
- 風力発電
- 半導体製造装置
- 軍事装備
- ロボット
など現代産業に欠かせない。
中国が輸出を制限すれば、世界経済そのものが影響を受ける。
そのため米国や欧州、日本は「脱中国化」を急いでいるのである。
中国が強いのは鉱山を持っているからではない
一般的な説明では、「中国はレアアース埋蔵量が多いから強い」と語られる。
しかしこれは半分しか正しくない。
実際には中国より埋蔵量が多い国も存在する。
問題はその先にある。
レアアースは掘り出しただけでは使えない。
採掘後に、
- 分離
- 精製
- 化学処理
- 磁石製造
- 部品加工
という複雑な工程が必要になる。
中国は数十年をかけてこの全工程を国内で完結できる体制を構築した。
つまり世界が依存しているのは鉱山ではなく、中国の加工能力なのである。
日本人が見落としやすい中国の本当の強み
中国の強みは安い労働力ではない。
本当の強みは、産業チェーン全体を持っていることである。
例えばレアアースを採掘した国があったとしても、
精製設備がなければ意味がない。
精製設備を作っても、今度は磁石工場が必要になる。
磁石工場を作っても、顧客や物流網が必要になる。
中国はこれらをすべて国内に持っている。
だから各国が巨額補助金を出しても、中国と同じ供給網を数年で作るのは難しい。
台湾メディアが「短期的実現は絶望的」と分析する理由もそこにある。
日本は実は先に危機を経験していた
日本は2010年の尖閣諸島問題で、中国からレアアース輸出規制を受けた経験がある。
当時、日本企業は大きな衝撃を受けた。
その後、
- 豪州
- ベトナム
- マレーシア
などからの調達を増やし、多様化を進めてきた。
しかし現在でも中国は重要な供給国であり続けている。
つまり日本ですら15年以上かけて完全脱却できていないのである。
中国はなぜレアアースを武器にできるのか
中国は近年、
- 半導体
- AI
- EV
- 太陽光発電
などの分野で米国から制裁や輸出規制を受けている。
その対抗手段として注目されているのがレアアースである。
中国から見れば、
「半導体は米国が握る」
「レアアースは中国が握る」
という構図になる。
実際、中国は重要鉱物の輸出管理を強化し始めている。
これは単なる経済政策ではなく、地政学的なカードとして使われているのである。
脱中国化は本当に実現するのか
長期的には可能性がある。
米国は国内鉱山への投資を拡大し、豪州やブラジルも開発を進めている。
日本や欧州も戦略備蓄やリサイクルを強化している。
しかし短期的には厳しい。
なぜなら中国が支配しているのは資源ではなく、
- 技術
- 人材
- 設備
- 顧客ネットワーク
- 加工ノウハウ
だからだ。
これは工場を建てれば解決する問題ではない。
数十年かけて築かれた産業基盤そのものなのである。
世界は「中国後」を作れるのか
今回のG7目標は、中国を排除するというよりも、中国依存によるリスクを減らすことが目的だ。
しかし現実には、中国は依然としてレアアース産業の中心にいる。
世界は今、「中国抜きの供給網」を作ろうとしている。
だが、その挑戦は半導体以上に難しいかもしれない。
レアアース問題は単なる資源争いではない。
国家戦略、人材育成、技術蓄積、産業政策が何十年にもわたって積み重なった結果なのである。

