2026年6月、コメ価格高騰が続く中で、JA(農業協同組合)の存在意義を問う議論が再び活発化している。PRESIDENT Onlineでは、JAが本来の協同組合としての役割から離れ、農家や消費者に不利益を与える巨大組織になっているのではないかという問題提起が行われた。
コメ不足や価格高騰が続く今、多くの人は農家の収入が増えていると考えがちだ。しかし現場では必ずしもそうではない。農家は肥料、農薬、農機具、燃料などのコスト上昇に苦しみ、消費者は高いコメを買わされている。その一方で、流通や制度の仕組みそのものに問題があるのではないかという声も強まっている。
JAはなぜここまで大きくなったのか
JAの原点は小規模農家の相互扶助だった。
個々の農家では価格交渉力が弱いため、共同購入によって肥料や農薬を安く仕入れ、共同販売によって農産物を有利な条件で売ることが目的だった。
ところが現在のJAは、農産物販売だけではない。
肥料や農薬の販売、農機具、金融、保険、共済、ガソリンスタンド、不動産など幅広い事業を抱える巨大組織へ成長した。
農家は農産物をJAへ出荷し、JAで肥料を購入し、JAバンクで融資を受け、JA共済に加入する。
つまりJAは農業インフラそのものになっている。
本来は農家を支えるための組織だったが、巨大化した結果、組織維持そのものが目的化しているのではないかという批判が生まれている。
コメ高騰で見えた日本農業の構造問題
令和の米騒動によって、多くの日本人が初めて農業の構造問題を意識するようになった。
問題は単純なコメ不足ではない。
日本の基幹的農業従事者はこの25年間で大幅に減少した。高齢化も進み、担い手不足は深刻化している。
さらに肥料価格は国際市況の影響を受けて上昇している。
農家の収益は圧迫される一方で、消費者価格は上がる。
本来なら市場原理によって新規参入や競争が起きるはずだが、日本の農業は長年にわたりJAを中心とした仕組みで運営されてきた。
そのため価格形成や流通構造が一般消費者から見えにくい。
コメ高騰によって、その見えにくかった部分に初めて光が当たり始めている。
ワタミやアイリスが参入する理由
興味深いのは、最近になって異業種企業が農業へ参入していることだ。
ワタミはコメの自給化を進めている。
アイリスオーヤマも農業事業へ本格参入した。
彼らの目的は農業そのものではない。
安定調達である。
市場価格の高騰や供給不足に振り回されるより、自分たちで作った方が安定すると判断したのだ。
これは日本農業に対する企業側の不信感とも言える。
もし既存の流通システムが十分機能しているなら、企業がわざわざ農業へ参入する必要はない。
異業種参入の増加は、日本の食料供給システムに変化が起きていることを示している。
JAは必要なのか不要なのか
ここで注意しなければならないのは、JA悪玉論だけでは問題は解決しないということだ。
地方ではJAが唯一の金融機関である地域もある。
農機具整備や営農指導も担っている。
もしJAが突然消えれば、多くの地域農業は混乱するだろう。
一方で、競争原理が働きにくい構造が温存されていることも事実だ。
農業人口が減少し続ける中で、従来の仕組みが本当に持続可能なのかという議論は避けられない。
重要なのはJAを守るか壊すかではない。
農家と消費者の双方に利益がある仕組みへどう改革するかである。
コメ問題は食料安全保障の問題でもある
日本人は長年、食料が不足するという発想を持たずに暮らしてきた。
しかしコメ価格高騰によって、その前提が揺らぎ始めている。
担い手不足。
高齢化。
耕作放棄地の増加。
肥料価格高騰。
気候変動。
こうした問題は今後も続く可能性が高い。
JA論争の本質は、単なる組織批判ではない。
日本が将来も安定して食料を生産できるのかという食料安全保障の問題なのである。
コメ高騰は一時的な価格問題として終わるかもしれない。
しかしその背後にある農業構造の課題は、これからの日本社会に長く残り続けるだろう。
生産現場を知ることも大切
農業や食料供給の仕組みに関心が高まる中で、生産者から直接食材を届けるサービスにも注目が集まっている。無農薬野菜のミレーは、千葉県の生産者ネットワークから朝採れ野菜を当日発送する宅配サービスとして知られている。コメや野菜がどのような現場で作られているのかを身近に感じたい人にとって、一つの選択肢になるだろう。

