2026年6月、東京ディズニーリゾートが駐車料金の値上げを実施した。普通車は3000円から4000円へ引き上げられた。かつてなら「客離れが起きるのではないか」と心配されたかもしれない。しかし現在のディズニーは、むしろ高価格化を進めながらも高い人気を維持している。
一方でハウステンボスは大型絶叫コースターを導入し、富士急ハイランドはキャラクターコラボを強化している。
なぜ同じテーマパーク業界なのに戦略がこれほど違うのだろうか。
テーマパーク業界は「客数競争」を卒業した
多くの人はテーマパークの成功を「入園者数」で考える。
しかし現在の業界では、その考え方が大きく変わっている。
ディズニーを運営するオリエンタルランドは近年、チケット価格の変動制導入や有料優先サービス拡充を進めてきた。
狙いは明確だ。
来園者を増やすことではない。
一人当たりの消費額を増やすことである。
実際に近年の決算を見ると、入園者数は大きく伸びていないにもかかわらず、ゲスト1人当たり売上高は過去最高水準を更新している。
つまりディズニーは、「たくさん来てもらう」から、「来た人にたくさん使ってもらう」へと発想を変えたのである。
なぜ若者離れを恐れなくなったのか
かつてテーマパークは若者が何度も通う場所だった。
しかし現在は事情が異なる。
少子化が進み、若年人口は減少している。
さらにSNS時代になり、消費者はテーマパーク以外にも多くの娯楽を持つようになった。
その結果、テーマパーク各社はリピーターの回数を増やすよりも、一回の来園価値を最大化する方向へ動いている。
ディズニーの駐車料金値上げもその一環である。
多少価格が上がっても来園する層に集中する方が利益率は高い。
これは航空会社や高級ホテルが採用している戦略と非常に近い。
ハウステンボスが絶叫マシンに賭ける理由
ディズニーとは対照的に、ハウステンボスは大型絶叫コースターを導入する。
なぜか。
ハウステンボスは長年、
- 花
- イルミネーション
- ヨーロッパ風の街並み
を強みとしてきた。
しかしこれだけでは若年層を継続的に呼び込むことが難しい。
そこで導入されるのが絶叫マシンである。
これは単なるアトラクション追加ではない。
SNS時代における「話題の創出装置」だ。
絶叫体験は動画になりやすく、拡散されやすい。
テーマパークにとって今や広告費以上の価値を持つ。
富士急はなぜキャラクターを求めるのか
逆に富士急ハイランドは絶叫マシンの王者でありながら、キャラクターコンテンツを強化している。
これは絶叫好きだけでは市場が限られるからだ。
家族連れ。
女性客。
海外観光客。
こうした層は絶叫だけでは取り込めない。
そこでサンエックスや海外キャラクターとのコラボを進めている。
つまり富士急は、「絶叫だけの施設」から、「滞在型レジャー施設」への転換を進めているのである。
中国ではテーマパーク競争がさらに激しい
実はこの流れは日本だけではない。
中国では近年、テーマパーク投資が急拡大している。
上海ディズニーランドはもちろん、中国国内企業も大型テーマパーク建設を進めている。
中国の特徴は規模だ。
人口の多さだけでなく、国内旅行市場が巨大である。
さらに地方政府が観光開発を重要政策として支援している。
そのためテーマパークは単独施設ではなく、
- ホテル
- 商業施設
- 不動産開発
- 交通インフラ
を組み合わせた巨大プロジェクトとして建設される。
日本のテーマパークが施設単体で利益を追求するのに対し、中国では都市開発の一部として運営されるケースが多い。
日本人への影響
今後、日本のテーマパークはさらに高価格化が進む可能性が高い。
少子高齢化によって客数の大幅増加が期待できないからだ。
その代わり、
- 特別体験
- プレミアムサービス
- 宿泊
- 限定イベント
への依存度が高まる。
つまりテーマパークは「入園料ビジネス」から「体験ビジネス」へ変わりつつある。
テーマパークのライバルはテーマパークではない
実は現在、ディズニーや富士急の本当のライバルは他の遊園地ではない。
旅行そのものである。
温泉旅行。
海外旅行。
アクティビティ体験。
消費者は限られた時間とお金をどこに使うかを選んでいる。
だからこそ各テーマパークは「ここでしかできない体験」を競い始めている。
現地オプショナルツアー予約&観光旅行【VELTRA-ベルトラ】
結論
ディズニーの駐車料金値上げは単なる値上げではない。
テーマパーク業界全体が、「たくさん集める時代」から「高い体験価値を提供する時代」へ移行した象徴である。
ハウステンボスは絶叫体験を売り、富士急はキャラクター体験を売り、ディズニーはプレミアム体験を売る。
今後の勝者は、最も多くの客を集めた企業ではなく、最も強い体験価値を作った企業になるだろう。

