中国のアイス市場は世界最大級です。人口が多いから売れていると思われがちですが、それだけでは説明できません。
実は中国のアイス市場は、近年の中国経済や若者消費の変化を映す鏡になっています。
かつては1本数百円を超える高級アイスがSNSで話題になりました。しかし現在は安価なアイスへの回帰が進み、中国人の消費行動そのものが変化しつつあります。
なぜ中国では高級アイスブームが起き、そして失速したのでしょうか。
中国で有名なアイスブランドとは
まず中国で知名度が高いアイスを整理してみましょう。
代表的なのは次のブランドです。
- 伊利(Yili)
- 蒙牛(Mengniu)
- 巧楽茲
- 東北大板
- 鐘薛高
- 茅台アイス
- ハーゲンダッツ
この中で最も中国らしい存在が鐘薛高(ジョンシュエガオ)です。
中国では一時期「アイス界のエルメス」と呼ばれ、1本10〜20元を超える高級アイスとして人気を集めました。
しかし現在では、中国の消費変化を象徴する存在として語られることが増えています。
なぜ中国では高級アイスが流行したのか
日本ではアイスは日常のおやつです。
ガリガリ君やスーパーカップのように、安くて気軽に買える商品が主流です。
一方、中国では少し違いました。
背景には中国特有の「消費の見せ方」があります。
経済成長期の中国では、
- 高級車
- 高級スマホ
- 高級コーヒー
- 高級アイス
といった商品が「豊かさの象徴」として機能しました。
SNSに投稿しやすく、価格も比較的手軽だったため、高級アイスは若者の自己表現ツールになったのです。
つまり中国人が買っていたのはアイスそのものではありません。
「高級品を楽しむ自分」という体験でした。
「雪糕刺客」が中国で大炎上した理由
しかし状況は変わります。
中国では数年前から「雪糕刺客(アイスの暗殺者)」という言葉が流行しました。
冷凍ケースに普通のアイスと並んでいるのに、レジで会計すると想像以上に高額だったという現象です。
高級アイスブランドが急増し、値札表示が分かりにくい店舗も少なくありませんでした。
消費者の不満は一気に爆発します。
なぜここまで反発が大きかったのでしょうか。
それは中国経済の減速です。
不動産不況や就職難の影響で若者の将来不安が高まりました。
以前なら受け入れられた高価格商品が、「ただ高いだけの商品」に見えるようになったのです。
中国では最近、
- 理性消費
- 平替(安価な代替品)
- コスパ重視
という言葉が流行しています。
アイス市場も例外ではありませんでした。
中国人はなぜ東北大板を支持するのか

高級アイスが失速する一方で人気を維持しているのが東北大板です。
東北地方発祥のシンプルな棒アイスで、
- 安い
- 大きい
- 昔ながら
という特徴があります。
日本で例えるなら昔ながらのホームランバーやガリガリ君に近い存在です。
面白いのは、中国人が経済不安を感じるほど、このような庶民的ブランドが再評価されることです。
これは日本の「失われた30年」と少し似ています。
景気が悪くなると、人々は高級品よりも安心感を求めるようになります。
アイス市場にもその心理が表れているのです。
中国ではアイスが観光資源になっている

中国のアイス市場で日本人が驚くのが文創アイスです。
故宮や博物館、歴史遺跡をモチーフにしたアイスが全国で販売されています。
日本にもご当地アイスはありますが、中国の規模は桁違いです。
なぜなら中国では観光地がSNS映え競争をしているからです。
観光客は、
- 歴史建築
- 文創グッズ
- 特別デザインのアイス
を一緒に撮影して投稿します。
つまりアイスは食品ではなく、観光コンテンツの一部になっているのです。
日本への影響はあるのか
実はあります。
中国人観光客が日本で購入するスイーツやアイスにも同じ傾向が見られます。
単においしいだけではなく、
- 話題性
- 見た目
- ストーリー
- ギフト性
が重要視されます。
そのため日本の高級スイーツやご当地スイーツは、中国人観光客との相性が非常に良いのです。
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中国でも日本でも、「特別感のあるスイーツ」は贈答需要が根強く存在します。
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まとめ
中国のアイス市場を見ると、中国社会の変化がよく分かります。
高級アイスが流行した背景には経済成長と見せる消費がありました。
一方で現在は、
- 景気減速
- 若者の節約志向
- コスパ重視
が広がり、高級路線は苦戦しています。
中国人がアイスを買う理由は、日本人が考える「おやつ」とは少し違います。
そこには面子、SNS、観光、消費心理が複雑に絡み合っています。
アイス一本から中国経済を読み解けることこそ、この市場の面白さと言えるでしょう。

