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中国はなぜ日本への団体旅行を突然止めたのか? 観光に見える「対日圧力カード」の正体

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中国の国有旅行会社が日本向け団体旅行ツアーの募集を開始した直後、突然販売を停止したことが大きな話題になっている。一部では「中国人旅行客が戻ってくる」と期待する声もあったが、わずか数日で状況は一変した。

しかし、この出来事を単なる観光ニュースとして見ると本質を見誤る。

実際には、中国における旅行業界の特殊な構造と、中国政府が長年使ってきた外交カードの一つが関係している可能性が高い。

目次

なぜ中国では旅行が政治問題になるのか

日本では旅行会社は基本的に民間企業であり、海外ツアーの販売可否を政府が直接管理することはない。

ところが中国では事情がまったく異なる。

海外団体旅行は文化観光部の許可制度と深く結び付いており、特に国有系旅行会社は政府方針を強く意識して運営されている。

過去にも中国は韓国に対して観光制限を行った。

2017年のTHAAD(高高度防衛ミサイル)問題では、中国人団体旅行客が激減し、韓国観光業界は大きな打撃を受けた。

つまり中国にとって観光は単なる経済活動ではなく、外交政策の一部でもある。

今回の訪日団体旅行停止も、この延長線上で考えるべきだろう。

中国政府が本当に恐れているもの

表向きには安全保障や外交問題が背景とされている。

しかし中国政府が本当に警戒しているのは、日本旅行そのものではない。

中国人が実際の日本社会を見ることである。

中国国内では経済不安や若者失業率の上昇、不動産不況などが続いている。

その一方で、日本は人口減少や低成長が続きながらも社会秩序や治安を維持している。

中国人観光客のSNS投稿には、

「街が清潔」
「サービスが丁寧」
「地方都市でもインフラが整っている」

といった感想が数多く見られる。

中国政府にとって、大量の国民が海外で異なる社会モデルを体験することは完全に歓迎できる話ではない。

特に現在のように国内景気への不満が高まっている時期はなおさらである。

なぜ再開直後に停止したのか

今回の流れを見ると、中国側でも訪日旅行需要を完全には無視できなくなっている。

円安によって日本旅行の価格競争力は高まっている。

韓国や東南アジアと並び、日本は依然として中国人の人気旅行先だ。

旅行会社としては再開したい。

航空会社も利用者を増やしたい。

地方政府も観光収入が欲しい。

ところが外交面では台湾問題や安全保障問題を巡る対立が続いている。

そのため、中国政府内部でも

「経済的には再開したい」
「政治的には強硬姿勢を見せたい」

という矛盾が生じている。

今回の募集停止は、その綱引きが表面化した事例と見ることができる。

日本への影響は限定的なのか

実は以前ほどではない。

かつて日本のインバウンド市場は中国依存が極めて高かった。

しかしコロナ後は韓国、台湾、香港、アメリカ、東南アジアからの訪日客が増加した。

中国団体客が減っても、日本観光全体が直ちに崩れる状況ではなくなっている。

ただし地方空港、ドラッグストア、観光バス会社、免税店など、中国団体客に依存していた業種への影響は依然として大きい。

中国が今後も旅行を外交カードとして利用するなら、日本企業はさらに市場分散を進める必要があるだろう。

今後どうなるのか

訪日団体旅行が完全復活する可能性はある。

しかし以前のような「爆買い時代」に戻る可能性は高くない。

中国経済は不動産不況によって家計資産が大きく傷ついている。

若年失業問題も続いている。

さらに中国政府は国家安全保障を重視する方向へ政策を転換している。

今後は、

  • 一部地域のみ再開
  • 団体旅行を限定的に許可
  • 状況次第で再び停止

という不安定な状態が続く可能性が高い。

今回の騒動は、中国において観光が自由市場ではなく、政治と密接につながる産業であることを改めて示した出来事だった。

中国の訪日旅行問題は、観光ニュースではない。

中国という国家の統治構造そのものを映し出しているのである。

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この記事を書いた人

東アジア観測所は、中国・東アジアの経済、社会、テクノロジー、地政学を観察するメディアです。
ニュースの表面だけでなく、「なぜそうなるのか」を生活者目線でわかりやすく整理しています。投資・旅行・通信・防災など、日本人の暮らしやビジネスに関係するテーマも扱います。

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