NHKが2025年度の受信料未収数を6年ぶりに減少させたことが話題になっている。未収数は約174万件となり、支払督促や法的手続きを強化したことが背景にあるとされる。
しかし興味深いのは、数字そのものよりも世論の反応だ。
ネット上では「なぜ見ていないのに払うのか」「なぜ訴訟まで行うのか」といった反発が目立つ。一方、中国では同じような議論はほとんど見られない。
なぜ日本ではNHK問題が繰り返し炎上し、中国では似た問題が起きないのだろうか。
実はそこには、日本と中国のメディア制度そのものの違いが存在している。
日本のNHKと中国のCCTVは似ているようで全く違う
多くの日本人はNHKと中国中央テレビ(CCTV)を同じ「国のテレビ局」のように考えがちだ。
しかし実際には制度が大きく異なる。
NHKは公共放送であり、法律上は政府機関ではない。主な財源は受信料であり、視聴者との契約によって運営されている。
一方、中国のCCTVを含む中央广播电视总台は国家の宣伝・情報発信機関としての性格が強い。財政予算や広告収入によって支えられており、日本のように各家庭が受信契約を結んで料金を支払う仕組みではない。
つまり、中国人は毎月「CCTV受信料」を請求されるわけではない。
そのため、日本のような「払う・払わない」という対立構造自体が生まれにくいのである。
なぜ日本では受信料問題が炎上するのか
実は問題の本質は金額ではない。
月額数千円のサービスはいくらでも存在する。
Netflix。
Amazon Prime Video。
WOWOWオンデマンド。
多くの人がこれらには自発的にお金を払う。
NHKが炎上する理由は、「自分で契約するサービス」ではなく、「テレビを設置すると契約義務が発生する制度」にある。
現代の若者にとってテレビは必需品ではない。
ニュースはスマホ。
スポーツは配信。
映画やドラマもサブスク。
こうした環境で育った世代ほど、テレビを前提にした制度に違和感を持ちやすい。
中国ではなぜ反発が表面化しないのか
ここで多くの日本人が誤解する。
中国人が公共放送に満足しているからではない。
そもそも議論の前提が違う。
中国ではテレビよりも動画配信サービスが急速に普及している。
若者の主な視聴先は、
- iQIYI(愛奇芸)
- Tencent Video(騰訊視頻)
- Youku(優酷)
- Bilibili
などである。
実際、中国の都市部では若者がテレビを持たないケースも珍しくない。
しかしテレビ離れが起きても、NHKのような受信料制度が存在しないため、日本のような社会問題には発展しない。
中国では「テレビを見ないのになぜ払うのか」という議論が成立しないのである。
日本人が見落としている本当の論点
日本では受信料問題を単なる徴収問題として見る傾向がある。
しかし本質はそこではない。
本当のテーマは、誰がメディアの財布を握るのかである。
もしNHKが完全に税金で運営されれば、国民負担感は薄れるかもしれない。
しかし政治からの独立性をどう守るのかという問題が生じる。
逆に受信料制度は反発を受けやすいが、政府から一定の距離を置きやすい。
中国モデルは効率的に見える。
しかし国家との距離は日本より近い。
つまり、
- 日本は「独立性」を重視
- 中国は「統合性」を重視
という違いがある。
受信料問題は単なる料金徴収の話ではなく、民主主義とメディアの関係そのものを映し出しているのである。
テレビの時代は終わるのか
とはいえ、NHKを取り巻く環境が厳しくなっているのは間違いない。
日本でも中国でも若者の視聴行動はテレビから配信へ移っている。
今後は放送局という枠組みよりも、「どんなコンテンツを提供できるか」が重要になるだろう。
実際、多くの人はテレビ局という存在ではなく、見たい作品やスポーツ中継に対してお金を払う時代になっている。
NHK受信料問題の背景には、単なる徴収手法への不満だけでなく、「放送の時代から配信の時代へ」という巨大な変化が存在しているのである。
まとめ
NHK受信料への反発が強まる一方、中国で同じ問題が起きないのは、中国人が公共放送に満足しているからではない。
そもそも制度が違うからだ。
日本は視聴者から直接財源を集めるモデル。
中国は国家予算や広告収入を中心とするモデル。
そして現在、両国に共通して進んでいるのがテレビ離れである。
受信料問題は単なる料金の話ではない。
それは、日本社会がテレビ中心の時代から配信中心の時代へ移行していることを象徴する出来事でもある。

